2026年版「踏んだり蹴ったり」の意味・語源は?例文や類語、英語表現まで徹底解説
仕事でミスが続いたうえに、帰り道では電車が遅延し、さらに雨にまで降られる。そんな不運が重なった一日を表すのにぴったりなのが、「踏んだり蹴ったり」という慣用句です。読み方は「ふんだりけったり」。重ね重ねひどい目に遭うことを意味し、日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われています。
ところが、ここで一つ疑問が浮かびます。ひどい目に遭っているのなら、「踏まれたり蹴られたり」と表現するほうが自然ではないでしょうか。なぜ、相手を踏んだり蹴ったりする側のような言い方が定着したのでしょうか。故事ことわざ辞典や精選版日本国語大辞典、漢字ペディアなどの記述を手がかりに、意味や語源、正しい使い方、例文、類語、対義語、英語表現まで詳しく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 意味と読み方:「踏んだり蹴ったり」は「ふんだりけったり」と読み、不運やつらい出来事が重なることを表す慣用句。
- 語源と能動態の謎:もともと、ひどい目に遭わせる側の表現だったとする辞書解説があり、被害を受ける側にも意味が広がったと考えられている。
- 英語との違い:「add insult to injury」は悪い状況にさらに不快な仕打ちが加わることを表し、文脈によって「踏んだり蹴ったり」の訳として使える。
【意味と読み方】「踏んだり蹴ったり」はどんな状況で使う?
「踏んだり蹴ったり」の意味
「踏んだり蹴ったり」とは、重ね重ねひどい目に遭うこと、あるいは不幸や災難が次々と起こることを意味する慣用句です。小学館のデジタル大辞泉や故事ことわざ辞典でも、ひどい目に遭うことを表す言葉として解説されています。
ポイントは、単に一つの失敗や不幸が起きたというだけでなく、別の災難が重なり、状況がいっそう悪くなるというニュアンスです。
例えば、次のような状況が当てはまります。
- 寝坊して遅刻したうえ、重要な書類まで忘れてしまった。
- 旅行当日に大雨が降り、予約していた施設まで臨時休業になった。
- 仕事でトラブルが起きたうえ、対応に追われて別の仕事にも遅れが出た。
- スマートフォンを壊した直後に、修理費用の予想外の高さを知った。
いずれも、最初の問題に加えて別の困難が発生しています。こうした状況を振り返り、「今日は本当に踏んだり蹴ったりだった」と表現できます。
読み方は「ふんだりけったり」
正しい読み方は「ふんだりけったり」です。「踏」は「ふむ」、「蹴」は「ける」と読みますが、この慣用句では音便を伴った「踏んだり」「蹴ったり」という形になります。
漢字ペディアでは、「踏んだり蹴ったり」を「踏」から始まる言葉の一つとして掲載しています。「踏」は足を地に踏みつける意味を持ち、「蹴」は足でける動作を表す漢字です。
なお、「踏んだり蹴ったり」は一般的な文章では漢字表記が使われますが、ひらがなで「ふんだりけったり」と書いても意味は伝わります。読み方に迷った場合は、「ふんだりけったり」と覚えておけば問題ありません。
「踏んだり蹴ったり」と「泣きっ面に蜂」の違い
意味がよく似ているのが「泣きっ面に蜂」です。こちらは、泣いている人の顔にさらに蜂が刺すというイメージから、すでに不幸な状態にある人が追加の災難に見舞われることを表します。
「踏んだり蹴ったり」も不運が重なる状況に使いますが、必ずしも最初からつらい状態にある必要はありません。複数の失敗や災難が続いた一日をまとめて振り返る場合にも自然に使えます。
一方、「泣きっ面に蜂」は、すでに困っているところへさらに災難が加わるという構図を、より強く印象づける表現です。両者は近い意味を持ちますが、完全に同じ言葉というわけではありません。
【語源と由来】なぜ「踏まれたり蹴られたり」ではなく能動態なのか
本来は「ひどい目に遭わせる側」の表現だった
「踏んだり蹴ったり」の語源を考えるうえで重要なのが、動詞の形です。「踏んだり」は踏む側、「蹴ったり」は蹴る側の動作を表すため、被害を受ける側を主語にするなら「踏まれたり蹴られたり」のほうが自然に感じられます。
この疑問について、故事ことわざ辞典は、もともと相手を痛めつける側の行為を表す言葉だったという説明を掲載しています。つまり、当初は「踏んだり蹴ったりする」という加害側の表現として使われ、それがひどい目に遭う状況を表す言葉として広がったと考えられています。
この説明に従えば、「踏んだり蹴ったりな目に遭う」という現在の使い方は、被害を受ける側の状況を表すようになったものです。元の表現が持つ能動的な形が、そのまま慣用句に残ったと理解できます。
語源はどこまで分かっている?
語源については、辞書に記載された歴史的な用例も参考になります。コトバンクに掲載されている精選版日本国語大辞典では、浄瑠璃『信田森女占』の1713年の用例として「ふんだりけたりかみそったり」という表現が紹介されています。
同辞典は、ひどい目に遭わせたうえにさらにひどい目に遭わせること、重ね重ねつらい目に遭わせることという意味を示しています。また、取引相場において売買のどちらでも思惑が外れて損をすること、という別の意味も記録しています。
ただし、古い用例が確認できることと、言葉が生まれた瞬間や経緯が完全に分かっていることは別です。現在の辞書解説からは、加害側の表現から被害側の意味へと広がったという説明が読み取れますが、発生の詳細まで断定することはできません。
「踏まれたり蹴られたり」が正しいわけではない
「踏まれたり蹴られたり」は、文字どおり誰かに踏まれたり蹴られたりする被害を表す場合には自然な表現です。しかし、一般的な不運や災難の連続を表す慣用句として定着しているのは「踏んだり蹴ったり」です。
言葉は、文法的に別の言い方が考えられるからといって、必ずしもその形に置き換わるわけではありません。長い使用のなかで意味が広がり、元の動詞の形と現在の意味が一致しなくなることもあります。
したがって、「踏んだり蹴ったりは能動態だから間違い」という理解は適切ではありません。現在の慣用句として定着している意味と使い方を押さえることが大切です。
【使い方と例文】日常会話からビジネスまで自然に使う方法
日常会話での例文
日常会話では、複数の不運が続いたときに、自分の状況をまとめて表す言葉として使えます。
- 例文1:「朝から電車が遅れ、会社に着いたら財布を忘れたことに気づいた。今日は踏んだり蹴ったりだ」
- 例文2:「せっかくの旅行なのに雨で予定が変更になり、おまけにホテルまで遠かった。踏んだり蹴ったりの一日だった」
- 例文3:「パソコンが故障したと思ったら、バックアップも取れていなかった。まさに踏んだり蹴ったりだよ」
このように、最初の問題と、その後に起きた問題を並べると、言葉の意味が伝わりやすくなります。
ビジネスシーンでの例文
ビジネスでも、業務上のトラブルや予想外の損失が続いた状況を表すために使えます。ただし、やや感情的でくだけた響きがあるため、正式な報告書や取引先への謝罪文では、状況を具体的に説明するほうが適切です。
- 例文1:「システム障害への対応中に別の不具合も発生し、踏んだり蹴ったりの状況になってしまった」
- 例文2:「納期の延期に加えて追加費用まで発生し、踏んだり蹴ったりだった」
- 例文3:「準備に時間をかけた企画が延期になり、さらに担当者の変更も重なって、踏んだり蹴ったりの結果となった」
一方、上司や顧客に提出する正式な報告では、「複数のトラブルが連続して発生した」「当初の問題に加え、追加の費用負担が生じた」などと表現すれば、感情を抑えながら事実を伝えられます。
「踏んだり蹴ったりな目に遭う」は正しい?
「踏んだり蹴ったりな目に遭う」「踏んだり蹴ったりの一日」「踏んだり蹴ったりだった」は、いずれも自然な使い方です。「目に遭う」を組み合わせる場合は、ひどい仕打ちや災難を受けるという意味が明確になります。
反対に、単に忙しい、予定が多い、仕事が大変だというだけでは、必ずしも「踏んだり蹴ったり」とはいいません。複数の不運や困難が重なっているかどうかが、使い方を判断する目安です。
【類語・言い換え・対義語】意味の違いを比較
「踏んだり蹴ったり」を別の表現に置き換えたい場合は、何を強調したいのかを考えると選びやすくなります。不運が続くことなのか、弱い立場につけ込まれることなのか、悪い状況がさらに悪化することなのかによって、適切な言葉は変わります。
故事ことわざ辞典やイミダスの「会話で使えることわざ辞典」では、「泣きっ面に蜂」「痛む上に塩を塗る」など、意味の近い表現が紹介されています。
| 表現 | 意味・ニュアンス | 使い分けのポイント |
|---|---|---|
| 踏んだり蹴ったり | 不運や災難が重なり、ひどい目に遭うこと | 複数の困難をまとめて表す |
| 泣きっ面に蜂 | 困っているところへ、さらに災難が加わること | 追加の不運を強調する |
| 弱り目に祟り目 | 弱っているときに、さらに災難に遭うこと | もともと苦しい状況にある点を強調する |
| 傷口に塩を塗る | 傷ついている人をさらに苦しめること | 精神的な苦痛や、追い打ちをかける行為に使う |
| 一難去ってまた一難 | 一つの困難を乗り越えると、また別の困難が起こること | 問題が次々と発生する経過を強調する |
| 不幸は単独では来ない | 不幸が一つだけで終わらず、続けて起こること | 災難が連続する状況を説明する |
| 順風満帆 | 物事が支障なく順調に進むこと | 「踏んだり蹴ったり」と反対の状況を表す |
| 万事順調 | すべての物事がうまく進んでいること | 日常会話や仕事の状況説明で使いやすい |
厳密な対義語はある?
「踏んだり蹴ったり」には、故事ことわざ辞典で特定の対義語が示されていません。そのため、「順風満帆」や「万事順調」は、辞書上の固定した対義語というより、意味の上で反対の状況を表す言い換えとして理解するのが適切です。
例えば、「転職してから踏んだり蹴ったりだ」という文章を反対の意味にするなら、「転職してからは順風満帆だ」と表現できます。ただし、前者が不運の連続を強調するのに対し、後者は物事が順調に進むことを表しています。
文章に合わせた言い換えの選び方
文章を自然に整えるには、次のように使い分けると便利です。
- 日常会話で不運の連続を表したいなら「踏んだり蹴ったり」。
- 不幸の上にさらに災難が加わったことを強調するなら「泣きっ面に蜂」。
- 苦しい状態から抜け出せない様子を強調するなら「弱り目に祟り目」。
- 問題が解決するたびに別の問題が起きる状況なら「一難去ってまた一難」。
- 客観的なビジネス文書なら「トラブルが相次いだ」「損失が重なった」などの説明的な表現。
言葉の意味が似ていても、文章の目的によって適切な表現は変わります。特に仕事の報告では、慣用句だけで済ませず、何が起きたのかを具体的に記述することが大切です。
【英語表現】「add insult to injury」の意味と使い分け
「add insult to injury」は何を意味する?
「踏んだり蹴ったり」を英語にする場合、状況によっては「add insult to injury」が使えます。直訳すると「けがに侮辱を加える」という意味で、すでに悪い状況にある人に対し、さらに不快な仕打ちを加えて状況を悪化させることを表すイディオムです。
Cambridge English Dictionaryでは、何か別のことをして相手をさらに不快にさせ、悪い状況をいっそう悪化させる場合の表現として説明されています。
例えば、次の英文が考えられます。
例文:「My flight was delayed, and to add insult to injury, my luggage was lost.」
日本語訳:「飛行機が遅延したうえに、追い打ちをかけるように荷物まで紛失した」
最初のトラブルに加えて、さらに別の問題が発生した状況です。「踏んだり蹴ったり」の意味に近く、追加の災難が起きたことを強調できます。
「it never rains but it pours」との違い
もう一つ覚えておきたいのが、「It never rains but it pours.」という英語のことわざです。直訳すると「雨は降るときには土砂降りになる」という意味で、悪いことは一度に重なって起こりやすいという考え方を表します。
日本語の「踏んだり蹴ったり」は、不運や災難が続く状況全般に使えるため、文脈によってはこちらのほうが自然な対応表現になります。
一方、「add insult to injury」は、すでに起きている問題に対して、さらに相手を不快にさせる出来事や仕打ちが加わるというニュアンスが強い表現です。単にトラブルが重なった場合だけでなく、理不尽な対応を受けた場合にも使われます。
英語に訳す際は、日本語の慣用句を機械的に置き換えるのではなく、何を伝えたいのかに応じて選ぶことが大切です。
【プロの結論】「踏んだり蹴ったり」を正確に理解する3つのポイント
「踏んだり蹴ったり」を使いこなすうえで押さえておきたいのは、意味の範囲、語源の捉え方、そして場面に応じた表現の選択です。
1. 一つの失敗ではなく、不運の重なりを表す
この慣用句の中心にあるのは、重ね重ねひどい目に遭うという意味です。一度の失敗だけで使うよりも、複数のトラブルが続いた状況で使うほうが、本来のニュアンスが伝わります。
ただし、必ずしも大きな災害や深刻な被害である必要はありません。遅刻、忘れ物、雨、交通機関の遅延など、日常の小さな不運が重なった場合にも使えます。
2. 能動態だからといって誤用ではない
「踏まれたり蹴られたり」のほうが自然に感じられるのは、現在の意味を被害者の立場から考えるためです。しかし、故事ことわざ辞典などでは、もともと加害側の行為を表した表現だったという説明が示されています。
語源に関する説明と、現代語としての正誤は分けて考える必要があります。「踏んだり蹴ったり」は現在、不運が重なる状況を表す慣用句として定着しており、被害を受けた側が使っても誤りではありません。
3. 相手や媒体に合わせて言い換える
友人との会話や日記、SNSなどでは「今日は踏んだり蹴ったりだった」と表現することで、つらい状況を簡潔に伝えられます。
一方、会社の報告書や取引先への説明では、「複数の問題が連続して発生した」「追加の損失が生じた」など、事実関係が伝わる表現を選ぶほうが適切です。
また、相手が困っている状況でこの言葉を使うと、場合によっては軽く扱っているように受け取られる可能性があります。自分の不運を振り返る場合と、他人の困難について話す場合では、言葉の印象が異なる点にも注意しましょう。
【踏んだり蹴ったり】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「踏んだり蹴ったり」は悪いことが一つ起きただけでも使えますか?
A1:基本的には、複数の不運や困難が重なる状況で使います。一つの失敗だけであれば「大変な目に遭った」「ひどい目に遭った」などの表現が適しています。ただし、一つの問題が別の問題を引き起こし、結果的に災難が重なった場合には使えます。
Q2:「踏んだり蹴ったり」の語源は確定していますか?
A2:辞書では、もともとひどい目に遭わせる側の行為を表した言葉だったという説明が見られます。精選版日本国語大辞典には1713年の用例も掲載されています。ただし、言葉が生まれた具体的な経緯まで完全に確定しているわけではありません。
Q3:「踏んだり蹴ったり」の英語訳は「add insult to injury」で正しいですか?
A3:文脈によっては適切です。「add insult to injury」は、悪い状況にさらに不快な仕打ちが加わることを表します。不運が次々に起こる状況全般なら、「It never rains but it pours.」も候補になります。伝えたい状況に応じて使い分けましょう。
まとめ:「踏んだり蹴ったり」の意味を理解して正しく使おう
「踏んだり蹴ったり」は「ふんだりけったり」と読み、重ね重ねひどい目に遭うことや、不運が続く状況を表す慣用句です。日常会話ではもちろん、仕事上のトラブルが相次いだ状況を説明する際にも使えます。
語源については、もともと相手を痛めつける側の表現だったとする辞書解説があり、そこから被害を受ける側の状況を表す意味へと広がったと考えられています。そのため、「踏まれたり蹴られたり」と言わなくても、現在の慣用句として正しい使い方になります。
類語には「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」「一難去ってまた一難」などがあり、反対の状況を表す言葉としては「順風満帆」や「万事順調」が挙げられます。英語では「add insult to injury」や「It never rains but it pours.」が文脈に応じた表現です。
言葉の由来を知ると、普段何気なく使っている慣用句にも、意味が広がってきた歴史があることが分かります。「踏んだり蹴ったり」を使うときは、不運が重なった状況を的確に捉え、会話や文章の目的に合わせて表現を選びましょう。 (出典: 踏ん だり 蹴っ たり(Yahoo!ニュース))